4Techてく歩く

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N014 | FigmaのAIは、現代の「活版印刷」?価値が生まれる場所が変化する話

作者

リデ

リデザインドジェーピーGK

Creator

更新日

6/26/2025

こんばんは。のりーです。

昔むかし、人々は物語を囲炉裏端で語り継ぐことで、大切な知恵を次の世代へと伝えてきました。やがてグーテンベルクが活版印刷を発明し、書物が生まれると、「知」は爆発的に、そして正確に世界へと広がっていきました。

歴史は繰り返す、と言います。

そして今、AIという新しい「情報の革命」が、私たちの働き方、そして「言葉」そのものの価値を、根底から問い直そうとしています。

新しい技術は、いつだって少しミステリアスで、ちょっぴり怖いもの。

例えば、デザインツールのFigma。先日、「テキストで指示するだけでAIがデザイン案を作り、ボタン一つでWebサイトとして公開までできる」という、まるで魔法のような新機能を発表しました。

急速な技術革新を実感したとき、私達の胸には不安がよぎります。

でも、私は思うんです。こうした変化の時こそ、私たちは「人間にとっての本当の価値とは何か」と、真正面から向き合うことを迫られる。それは、自分自身の在り方を見つめ直す、最高のチャンスでもあるのだと。

「暮らすと働くをリデザインしよう」というテーマで、母親と二人の子供がテントの中で本を読んでいる心温まる瞬間が捉えられています。暖かな光に包まれた空間は、家族の絆と穏やかな時間を象徴し、「PERSONAL APPROACHES TO WORK-LIFE DESIGN」というメッセージを伝えています。この画像は、仕事と生活の調和を再考し、より豊かな日常を築くことの重要性を示唆しています。

📝現場の「小さな事件」が教えてくれたこと

具体的な事例として、最近私の職場である、IT系企業の現場で立て続けに起きた、2つの小さな「事件」についてお話しさせてください。

一つは、修正を重ねるうちに、デザインがいつの間にか古いバージョンに戻ってしまう「先祖返り」事件。「どうすれば防げますか?」とコーダーに尋ねても、返ってくるのは「気をつけます」という言葉。

では、チェック体制を強化しますか?人の注意力に頼る仕組みは、スピードを落とし、手間と時間を増やし、結果的にコスト増につながる…その限界に、私たちは気づいていました。

もう一つは「1ヶ月半待ち」事件。これは、専門家から専門家へと仕事が受け渡される、現在の「分業制」が生んだ弊害でした。特定のスキルを持つ人がボトルネックになると、プロジェクト全体が止まってしまうのです。

この2つの事件の根っこは同じです。それは、人と人の間にある、情報の伝達ロス。まるで、不正確な伝言ゲームのように、大切な情報が劣化したり、滞ったりすることで生まれる、すれ違いです。

道具が壊す「壁」と、生まれる「越境」

Figmaのようなツールは、このカッチリと分かれた「分業制の壁」を溶かし、デザイナーやディレクターが、ある程度コーディングの領域まで「越境」することを可能にしてくれます。

専門家同士の受け渡しが減れば、時間のロスも手間も劇的に減る。働き方そのものが変わっていくはずです。

そして何より、デザイナーの頭の中にある完成イメージが、劣化することなく形になる。情報伝達のロスが、限りなくゼロに近づきます。

これまで価値があった「指示通りに作業を実行する力」は、ツールが肩代わりしてくれるようになります。すると、価値は別の場所へと「移動」せざるを得ません。

では、その移動する価値とは、一体何なのでしょうか?

活版印刷が変えたもの、AIが変えるもの

ここで、少し歴史に目を向けてみましょう。

活版印刷が登場する前、価値は「聖書を記憶し、語れること」にありました。情報そのものが希少だったからです。

しかし、誰もが聖書を手にできる時代になると、「ただ知っている」ことの価値は薄れ、「その教えをどう解釈し、何を語るか」という、個人の思想や言語化の力が問われるようになりました。

今、AIが起こしているのは、これと同じ構造変化です。

AIは、いわば「アイデアの活版印刷技術」。これまで専門家の頭の中にしかなかった完成イメージを、誰もが安価に、大量に、正確に具現化できるようになります。

このとき、価値を持つのは何か。

それは、「そもそも、何を創りたいのか」という、意志を「言語化」する力です。

自分が何をしたいのか、するべきなのか。

この漠然とした想いを、AIにも、そしてチームの仲間にも伝わる、明確で力強い「言葉」にできるか。
言葉にできない想いは、AIに伝えることすらできません。
人は言葉があるからこそ、過去から学び、未来を構想できるのですから。

活版印刷が「何を言うか」の価値を高めたように、AIは「何を創りたいか」という意志の言語化の価値を、飛躍的に高めていくでしょう。

そして、その言語化された構想を、多様な人々の心に響くように伝え、プロジェクトを成功に導く「翻訳」の力も、同時に重要性を増していきます。

技術は、私たちの仕事を奪うのではありません。

「あなたは何を望み、何を言葉にするのか?」と、私たちの人間性そのものを、問いかけているのです。

💪リデザインのためのアクション

  1. 最近「伝言ゲーム」で困ったことを思い出してみよう: 「言った」「言わない」のすれ違いは、なぜ起きたのでしょう?その原因を探ることが、改善の第一歩です。
  2. あなたの「こうなったらいいな」を言葉にしてみよう: 仕事でも、暮らしでも構いません。漠然とした願いを、誰かに語れるくらい具体的な言葉にしてみる練習です。
  3. 誰かの「漠然とした想い」を言語化する手伝いをしてみよう: 「それって、つまりこういうことですか?」と問いかけ、相手の頭の中を整理してあげる。それは最高の「翻訳」の実践です。

🎯次回予告

来週のnextlomiaのテーマは【今月のリデザイン】。

45歳で大手航空会社を早期退職し、農家を目指して小豆島へ。しかし、彼を待っていたのは、移住前には見えていなかった甘くない現実だった。
地縁も血縁もない土地で、人の縁だけを頼りにたどり着いた、熊本・天草。さあ、これからという矢先に、あの熊本地震が襲う――。
波乱万丈のキャリアリデザイン、その物語をお届けします。お楽しみに。

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